電気製品の配線をするために久々に天井裏に上がった。私が心の中で密かに聖地と呼んでいる天井裏だ。
滅多に行くことのない、閉ざされた天上の世界。
正しく聖地と呼ぶにふさわしい。
エルサレムだ。崑崙山だ。ナルニア王国だ。
聖地は狭く、埃っぽく、昼間だというのにうす暗い。裏山と直結しているせいで、2mを越すヘビの越冬に使われていたりする。
色白の黒目がちの子供が隅にぼぉっとうずくまっていそうな場所だ。その子供が突如ブリッジの体勢になって、しかも顔が180度回転してこちらに向かってカサコソとはい出してきても、「ああ、やっぱり出るんだよね」と妙に納得してしまう、そんな場所だ。
出来ることなら永遠に封印しておきたいような、セイクリッド・ヘル・プレイスなのだが、長い人生の間にはそんな闇の中にも入って行かなくてはいけない時もある。
相槌1
と、めくるめく想像力を働かせつつ、意を決して爬虫類が休暇を過ごす薄暗い聖地へと入っていったわけだが、幸いにも節足動物群にも長めのヘビにも白塗りの少年にも遭遇することもなく、なんとなく物足りない気がしないわけでもないが作業は進んだ。
そして、作業開始から30分後。ようやく配線も終わり、地上への穴に向けて帰ろうとした時だ。左の視界の片隅に黒い塊が映ったような気がして反射的に懐中電灯の光を向けた。
背筋を冷や汗が伝った。
作業場所から1mも離れていない所にそれはあった。
はちのすですだ(´∀`)


去年、床に止まっていた上に大の字に寝ころんだ途端に見事に刺され、アナフィラキシーにテンパっているかもしれないキイロスズメバチの巣だ。
一瞬パニックになりかけたが、冷静に考えると蜂がいればとっくに刺されているはずだ。あたりを照らすと数匹の蜂の死骸がある。
そうだ。スズメバチは冬には巣を放棄し再び帰ってくることはない。
相槌2
というわけで、私はナイフで巣を切り取ってそれを手みやげに天上の聖地を後にしたのだが、折角の手みやげも下界ではあまり歓迎されなかった事については触れないでおこう。
by 家来1